
小柄 無銘 廉乗 布袋図 ※『後藤家小柄選集』所載
商品説明
廉乗は後藤家の十代目で光侶と諱し、八代即乗の四男として寛永五年(一六二八)に京都で生まれ、天和三年(一六八三)に五十六歳で剃髪し、幕閣の許可を得て廉乗と法号しました。元禄十年(一六九七)に家督を譲り京都へ隠居し、宝永五年(一七〇八)に八十一歳の長寿を全うしました。
布袋は中国唐四明山の禅僧で、顔は福徳円満の相、太鼓腹に布の袋と杖を携え、諸方を托鉢して回り、人々から布袋和尚と呼ばれ慕われました。
我が国では背負っている袋が大黒天の袋に似ていることから七福神の一人に数えられ、弥勒菩薩の化身とも称されよく信仰されています。
刀装具の画題としてもしばしば用いられ、「唐子布袋」「睡布袋」「指月布袋」「観瀑布袋」「渡水布袋」など、構図に変化をもたせ多様に描かれています。
文政年間に野田敬明によって著された『金工鑑定秘訣』には「廉乗彫物の気格抜群にして面白く、見所ある作なり。当代より江戸住居となる。此作より金目貫などは大いに厚金にて、目貫の掛目六、七、八匁位あるもあり。
廉乗の龍獅子類、其のほか全て上彫荒く、濶達の気象見ゆる。自身ナナ子を見て其の気濶を知るべし」と高く評されています。
この小柄は精緻に蒔かれた魚子を土台に、柔和な笑顔を湛(たた)え、大きく膨らんだ袋を背に横たわっている紋高い布袋和尚が画面いっぱいに据えられており、小柄全体から福々しい雰囲気が伝わってきます。
厚手の金で色絵とされた袋を仔細に観察しますと、まことに繊細な毛彫りで竜田川が彫り表されており、後藤宗家の作品らしい気品を備えております。
また廉乗作品の掟の一つとされる隠し鏨を紋に確認することができることは、この作品を鑑賞するうえでの余慶でもあります。
布袋和尚の膨(ふく)よかな太鼓腹は富貴繁栄の象徴とされており、お目出度い図柄のものです。
※『後藤家小柄選集』(福士繁雄先生監修)では七代顕乗と極められています。
詳細データ
- 時代
- 江戸時代中期
- 製作国
- 山城 国
- 製作手法
- 赤銅魚子地高彫金色絵
- 鑑定書種別
- 特別保存刀装具(日本美術刀剣保存協会)
- 小柄 長さ
- 97.0 ミリ
- 小柄 幅
- 14.3 ミリ