
小柄 銘 元治二夾鐘 東民斎 石黒政常(花押) 松下寿老人図
商品説明
石黒三代政常作の小柄です。三代政常は二代政常の嫡男で通称を銀之助といい、東民斎と号し、先代没後に三代政常を襲名しました。
政常の「政」の字をこの小柄のように「正攵」と異体に切ること多く、初代政常の代表的なものに似た形の花押を使用しています。
三代政常の作風は、横谷・石黒一門の常道である赤銅魚子地高彫色絵の作風の枠に収まらず、四分一磨地の棒小柄や、磨地と石目地や荒らし地の鐔など自由な製作方針にて多くの名品を遺しています。
松は生命力が強いことから古来長寿を意味する瑞木として扱われてきました。またその景観が雄大で美しいことから、吉祥文として衣服や調度品の意匠としてよく用いられ、めでたいもの、節操の象徴として意義づけられてきました。
寿老人は七福神のうちの一柱で、すべての福と寿をつかさどる長寿の神として知られ、福禄寿と同一ともいわれます。手にしている巻物には人間の寿命が記入してあるといわれ、長頭短躯がその特徴です。
この小柄は、そのおめでたい松と寿老人を取り合わせた縦図の棒小柄です。
上部の四分の一を空間としてとり、松の枝ぶりの先端を描くことで、主題の寿老人がより引き立つよう計算された構図となっています。
仔細に観察しますと中央に金の露象嵌を施した松葉を丁寧な片切彫で、幹の肌を大小の異なった鏨を駆使し極めて写実的に表現しています。
凹凸を駆使した高彫で表現された寿老人には金と赤銅を効果的に配し、額の皺、垂れ下がった眉、長く伸びた髭を繊細な毛彫りで表し、どこか物憂げで微妙な表情を見事に表現した政常の手腕には舌を巻かずにはいられません。
名流石黒派の頭領を継承した三代政常の力量をしっかりと堪能できる作品です。
※銘文に刻まれている夾鐘(きょうしょう)とは陰暦二月のことです。
詳細データ
- 時代
- 江戸時代後期
- 製作国
- 武蔵 国
- 製作手法
- 四分一磨地肉合高彫象嵌色絵
- 鑑定書種別
- 特別保存刀装具(日本美術刀剣保存協会)
- 小柄 長さ
- 98.0 ミリ
- 小柄 幅
- 14.6 ミリ