
鐔 古金工 瑞雲桁文字散図
商品説明
日本美術刀剣保存協会によって「瑞雲桁文字散図」と名付けられた鐔です。瑞雲とは仏教において慶賀の兆しとして出現する珍しい雲のことで、刀装具にしばしば用いられます。
「神代文字」と呼ばれるものがあります。漢字伝来以前の古代日本で使用されていた文字といわれ、神社の御神体や石碑などに刻まれていたり、現代でも神事に用いられたりします。神代文字にも様々な種類のものが伝わっていますが、その中に「出雲文字」というものがあり、江戸時代後期の国学者平田篤胤が文政二年(1819年)に著した『神字日文伝』の中で、出雲の石窟に刻まれていた文字として紹介しています。
この鐔にはアルファベットのx(エックス)の中央に傍線を通したような記号や、源氏香にも見える縦横の線の組み合わせで造形された文字のような記号が散らされていますが、これらが出雲文字に酷似しております。遠い桃山の時代に製作されたこの鐔に、神代文字が意味を持って刻まれたと考えますと興味は尽きません。
真鍮の地金に共金の線象嵌で瑞雲や神代文字が表されています。地金の表面には光忠の鐔にみられる細かい格子状の鑢目や金属収縮による筋目のようなのシワを確認することができます。
表面に塗布されていた漆が数百年の歳月で剥がれ景色となり、精練が一様ではない真鍮地と、意図的に施された格子状の鑢目、金属収縮による無作為の細かい線模様などが相まって、光の当たる角度によって千変万化する表情に魅了されずにはおられません。
抜けた線象嵌の跡を観察しますと、製作当時の鏨の痕跡をはっきりと確認することができ、被せた金が磨り減った「うっとり色絵」の枯淡の趣にも似た、なんとも言えない古雅な味わい感じます。
鑑賞するごとに自分の内面と向き合わせてくれるような、奥深い侘びた一枚です。ぜひ手に取って頂き、見るたびに変幻する景色を味わって頂きたいと思います。
詳細データ
- 時代
- 桃山時代
- 製作手法
- 真鍮地象嵌土手耳
- 鑑定書種別
- 保存刀装具(日本美術刀剣保存協会)
- 縦
- 78.4 ミリ
- 横
- 75.0 ミリ
- 切羽台厚さ
- 2.5 ミリ
- 耳際厚さ
- 6.8 ミリ