
短刀 銘 備前国住長舩祐定作 永禄五年八月吉日
商品説明
備前長舩派は、光忠を事実上の祖とし、爾来長光、景光、兼光、倫光と歴代名匠が続く、鎌倉期から南北朝期、室町期と永く繁栄した備前鍛冶の本流をなす一派です。
「刀といえば長舩」というほどに長舩鍛冶が名高いのは、多くの名品を打ち上げ遺したことに加え、時の武将と大きくつながりをもっていたことに依ります。
戦国期においては、毛利氏・赤松氏・浦上氏・明石氏・松田氏・三村氏・宇喜多氏などの各武将の所持銘や為銘の入った長舩鍛冶の刀が数多く遺されており、当時の武将と長舩一派の刀工との深い関係が見て取れ、長舩鍛冶の存在が日本の歴史上いかに重きをなしてきたかがよくわかります。
応仁の乱がおこり、全国的に戦乱の世となりますと刀剣の需要は急増し、長舩鍛冶は大量生産向きの工房となり、刀匠名を屋号的に用いるようになります。
わけても祐定一門は室町中期から末期に亘って最も繁栄し、一説によると銘に通称を関している祐定だけでも彦兵衛尉・与三左衛門尉を筆頭に二十一人を数えるという、長舩第一の鍛冶工房でありました。
この短刀祐定は与三左衛門尉祐定や源兵衛尉祐定などが活躍した永禄の年紀を添えたものです。
重ねやや厚く身幅尋常で、反りわずかに付いた精悍な体配をしております。
厚く地沸がつき杢目を交えた小板目鍛えの地鉄にはわずかに流れ肌交じり湯走りかかり、地景がよく入っています。
焼き高い湾れごころの刃文は小互の目が連なり、微細な沸が付き、金線砂流ししきりにかかり、刃縁は打ちのけや二重刃交え足入りよく変化し、刃中には沸と匂がいっぱいに広がり明るく冴えています。
帽子は乱れ込んで掃がけて返り、深く焼き下げています。
茎には謹直な字体で銘が切ってあり、年紀には入念作に多く切られる「吉日」の文字が入っています。
ハバキ上部約1センチの刃の部分に打ち込み傷が遺されており、この短刀が生きてきた歴史を垣間見ることができます。
戦国の薫りする凛とした一振です。
詳細データ
- 製作国
- 備前 国
- 製作年
- 永禄五年
- 経年数
- 459
- 登録年 / 県
- 平成十九年東京都
- 鑑定書種別
- 特別保存刀剣(日本美術刀剣保存協会)
- 刃長
- 22.1 センチ (七寸三分)
- 反り
- 0.1 センチ (三厘)
- 元幅
- 2.2 センチ
- 棟重ね
- 0.65 センチ
- 彫刻
- 表裏腰樋掻き流し
- 鎺
- 金着一重ハバキ
- 鞘
- 白鞘入